この記事ではこんなお悩みにお答えします
・賃貸併用住宅のメリットについて詳しく教えて欲しい。
・賃貸併用住宅に興味があるが、損をする可能性が無いか不安。。
家探し初心者さん
鹿児島 二郎
「賃貸併用住宅」とは、自身で住まう建物の一部を賃貸部分として第三者へ貸し出し、毎月の家賃収入を得ることができる住宅のことです。
うまくいけば家賃収入で自宅のローン返済を賄うことができるため、メリットだけに着目するとかなり有力な選択肢になり得ます。
しかし、「マイホーム」と「収益物件」の良いとこ取りができる一方、双方を両立させるために、機能性が中途半端になってしまうという側面もあります。
今回は「賃貸併用住宅」のメリットとデメリットについて、プロの目から見た客観的な視点で解説をおこないます。
目次
「賃貸併用住宅」とは?メリットとデメリットを宅建士が解説!
「賃貸併用住宅」のメリット
(1)購入時に住宅ローンを利用できる場合がある
冒頭でも触れた通り、賃貸併用住宅はマイホームに住みながら毎月の家賃収入を得ることができます。
ここで重要になるのが、物件の購入時に住宅ローンを利用できる場合があることです。
通常のアパートやワンルームマンションを購入して不動産投資をおこなう場合、金融機関から受ける融資は「不動産投資ローン」や「アパートローン」になります。
こうした商品は自宅を購入する際の「住宅ローン」に比べると、一般的に金利は高く設定されます。
しかし、賃貸併用住宅では「住宅ローン」を利用できるため、ある意味、安い金利水準で不動産投資をおこなうことができます。
加えて「住宅ローン控除」を受けることで、税制面での利益を享受できるのも大きなメリットです。
ちなみにどんな物件でも良いという訳ではなく、賃貸併用住宅の購入に住宅ローンを利用するためには、以下のような条件があります。
【 賃貸併用住宅の購入に住宅ローンを利用する場合の条件 】
- 自宅部分の床面積が、建物全体の50%以上であること
- 自宅部分の床面積が、公募面積で50㎡以上であること
※上記は2021年10月現在の法制に基づくものです。
家探し初心者さん
鹿児島 二郎
(2)将来、2世帯住宅としても利用できる
賃貸併用住宅は、当然ながらオーナー住居と賃貸部分の居住スペースが完全に分離しているため、二世帯住宅としての転用がおこないやすいというメリットがあります。
例えば、建築当初は第三者への賃貸で家賃収入を得て、両親が高齢になったタイミングで、その部屋に両親を住まわせるといった活用が可能です。
不幸にして両親が亡くなった場合や、ケアホーム等への転居で部屋を利用することが無くなってしまった場合は再度賃貸として募集することができるため、活用の汎用性が高い点でも優れていると言えるでしょう。
注意点としては、同居が必要になったタイミングで賃貸部分が空いているとは限らないため、近い将来の同居が想定される場合は、賃借人と「定期借家契約」を結んでおく等の対策を講じましょう。
(3)賃貸管理が比較的容易
ワンルームマンションやアパート等の収益物件を購入する際、往々にして自宅から距離が離れた物件を選ぶことがあります。
特に、首都圏に在住していながら地方の不動産に投資する場合では、満室経営の維持や細かな建物のメンテナンスといった業務を管理会社に一任せざるを得ないため、トラブルを未然に防止するような経営をおこなうことが難しいです。
この点、賃貸併用住宅であれば賃借人は同じ建物に住んでいるわけですから、日常的なトラブルへの対応も迅速におこなえますし、土地勘があるため、満室を維持するための適切な対応なども、管理会社と一緒に取り組むことが可能となります。
場合によっては管理会社への委託をせず、「自主管理」をすることで毎月のコストを削減することもできますので、柔軟な賃貸経営を実施しやすいのも、賃貸併用住宅特有のメリットです。
「賃貸併用住宅」のデメリット
(1)賃借人に気を遣う必要がある
賃貸併用住宅のデメリットとして、生活する上で賃借人に気を遣う必要があります。
例えば、オーナー自身に小さい子供がいたり、犬を飼っている場合等では、騒音の点で賃借人からクレームを受ける可能性があります。
家探し初心者さん
鹿児島 二郎
反対に、賃借人が学生等で夜通し友人と騒いでいる場合でも、借りてもらっているという立場上強く注意しにくいケースがあります。
長く戸建に住んでおり、他人に気を遣いながら生活した経験がない方は、こうしたデメリットについて事前に想定しておくことをおすすめします。
(2)投資用物件としての収益性は低い
賃貸併用住宅のオーナー居住部分は、賃貸部分よりも広い住戸を設けることが多いです。
そのため、初めから建物の全てを賃貸用として設計されたアパート等と比べると、収益性は低くなります。
一般に、1㎡当たりの家賃収入はワンルームや1Kといった単身世帯用の間取りが最も高くなるため、仮に以下のような2つの物件を同じ土地上に建築し、全て賃貸に出した場合は、賃貸併用住宅の方がアパートに比べて月々の家賃収入が少なくなる可能性が高いです。
【 収益シミュレーションの例 】
- 賃貸併用住宅1LDK:家賃:85,000円/月1K×2戸:家賃:50,000円/月 ×2計:家賃:185,000円/月
- 一棟アパート1K×4戸:家賃:50,000円/月 ×4計:家賃:200,000円/月
また、賃貸併用住宅のオーナー住戸は、自分自身が住むという観点から内装や設備のグレードも高くなる傾向にありますので、それが賃料の上昇に影響を与えないようなオプション(例:クロスの色を鮮やかにする、玄関のデザインをおしゃれにする等)であれば、この点も投資用物件として最適化されたアパートに劣ります。
賃貸併用住宅の購入目的として、「不動産投資をやってみたい!」という思いが強い方であれば、最初から投資用の不動産を買ってしまったほうが効率が良い場合があります。
(3)売却しにくい
賃貸併用住宅は将来的に売却することになった際、中々売れずに販売期間が長期化してしまうケースが多いです。
理由は単純で、賃貸併用住宅を欲しい方と通常の戸建住宅を探している方とを比べた場合、前者の方が絶対数が少なくなるからです。
また、(2)で解説した通り、投資用物件単体として見た際の収益性もアパートに劣るため、不動産投資家からの需要もあまり期待できません。
ある程度築年数が経過している場合は、土地として販売することで建物の構造は問題にならないかもしれませんが、そもそも賃借人が住み続けている場合は、購入した人が取り壊して自分の家を建てることができません。
前述した、両親との同居が想定されるケースと同様、近い将来に売却や建て替えをおこなう可能性が高い場合は、賃借人と「定期借家契約」を結んでおく等の対策が必要となります。
家探し初心者さん
鹿児島 二郎
まとめ
賃貸併用住宅のメリット
- 条件を満たせば、購入時に住宅ローンを利用できる場合がある
- 居住スペースが分かれているため、将来2世帯住宅としても利用できる
- 物件の賃貸管理が比較的容易
賃貸併用住宅のデメリット
- 生活する上で賃借人に気を遣う必要がある
- アパートに比べて、投資用物件としての収益性は低い
- 通常の戸建と比べると売却しにくい
総合的に見て、私は「賃貸併用住宅」は、不動産を購入する上で有力な選択肢だと思います。
やはり、家賃収入を得ながら住宅ローンを返済できるのは、他にはない大きな魅力です。
しかし、投資という側面があることによって、通常のマイホームには無いデメリットが生じてしまうことも事実です。
「賃貸併用住宅」を購入する際は、一緒に住む家族とも十分に話し合った上で決断しましょう。
鹿児島 二郎