この記事ではこんな疑問にお答えします
・両手仲介という行為について詳しく知りたい。
・両手仲介に関する業界の裏話を教えて欲しい!
家探し初心者さん
鹿児島 二郎
「両手仲介」とは、不動産屋が物件を仲介する際、売主様と買主様の両方を自社でお手伝いすることで、双方から仲介手数料を収受できる取引のことです。
逆に、売主様と買主様、どちらか一方のみを自社でお手伝いし、相手方には別の仲介会社が介在している取引を「片手仲介」(別名:分かれ)と呼びます。
不動産屋にとって、「両手仲介」ができれば単純に売り上げは2倍となります。
そして、「片手仲介」の場合も、一つの不動産について法令やリスクの調査をおこない、取引を成立に導くという手間は大して変わらないため、世の不動産屋は積極的に「両手仲介」を狙いにいくわけです。
数年前までは、「両手仲介」をおこなうために、自社のお客様以外は物件の紹介や内覧を拒否するような、いわゆる「囲い込み」が問題となっていましたが、レインズ掲載の厳格化等もあって、最近は落ち着いてきた印象です。
特に、売却の主要な依頼先である大手仲介会社は、売主様や他業者から「囲い込み」を疑われることに神経を使っておりますので、レインズへの掲載義務がある専任媒介契約を結んでいる場合は、それほど気にしなくても大丈夫でしょう。
ここで話が終われば、業界の改善事例をご紹介した平和な記事となるのですが、そうはいかないのが不動産の世界です。
実は、「両手仲介」の問題を意識すべきなのは、何も売却に限った話ではありません。
今回は、大手仲介会社に勤める私が経験した裏話や、他の営業マンがおこなっていた事例を基に、「両手仲介」の本質に迫ります。
不動産の「両手仲介」とは?注意すべきなのは売る時だけ?
仲介会社の営業担当者が「両手仲介」を狙うのは、自社で媒介を受けている「売却のお客様」だけではなく、これから住まい探しをスタートさせる「購入のお客様」でも同じです。
そしてこのビジネスモデルは、自社の媒介物件が皆無の仲介会社(所謂「客付け業者」)にも成立します。
家探し初心者さん
鹿児島 二郎
不動産業界には、どの会社にも仲介手数料を払ってくれる売主が存在する
前述したように、「両手仲介」をおこなうためには、売主様と買主様、双方を自社でお手伝いする必要があります。
この、お手伝いをする「売主様」には、どこかの仲介会社へ売却を依頼している個人のお客様以外に、自社で新築戸建やリノベーション済の中古マンションといった商品を取り扱っている「不動産会社」も含まれます。
不動産会社は個人のお客様と異なり、物件の販売資料作成やレインズへの掲載といった業務を自前でできるため、特定の仲介会社と媒介契約を結ぶ必要がありません。
言い換えれば、全国どこの仲介会社でも、売主不動産会社の新築、リノベ物件を「両手仲介案件」として取り扱うことが可能なのです。
家探し初心者さん
鹿児島 二郎
用語解説:「捨て看(すてかん)」とは?
人のよく通る場所の電柱にチラシを貼ったり、道端にカラーコーンを立てて広告をおこなう手法。大抵は勝手に設置しているため、違法行為であることが多い。
仲介会社の営業マンが、あなたに紹介する物件の順番
ここまで読み進めて頂いた読者の方はもう察しが付いていらっしゃることと思いますが、仲介会社が住まい探しをしている購入のお客様に買って欲しい物件の優先順位は、以下の通りとなります。
- 自社で売却依頼を受けている売主様の物件(その営業マンが売主様を担当)【両手仲介】
- 売主不動産会社の新築戸建やリノベーションマンション【両手仲介】
- 自社で売却依頼を受けている売主様の物件(他の営業マンが売主様を担当)【両手仲介】
- 他社が売却依頼を受けている売主様の物件【片手仲介】
営業担当者の多くはまず 1. ~ 3. の物件を積極的に紹介し、お客様が盛り上がらなかった時には、仕方なく 4. の物件を紹介することになります。
早い話が、顧客の希望条件など両手仲介の魅力に比べたら二の次なのです。
なお、3. の優先順位が低いのは、この形で両手仲介をまとめても売主様から頂く仲介手数料は別の担当者の成績になるため、会社としては両手でも、営業マン個人としては片手になってしまうことが理由です。
家探し初心者さん
鹿児島 二郎
私の場合は、お客様の条件に最適な物件が 4. の片手仲介物件であれば、そちらも最初の段階でご紹介していましたので(他の仲介会社から先に紹介され、そちらで契約されてしまったら元も子もありません)、実際には 4. でご成約になるケースも多かったです。
しかし、同僚の中には 4. の物件は一切見せず、まさに「一撃必殺」で両手仲介にまとめ上げる猛者も存在していました。
この辺りのノウハウについては、今後別の記事でストーリー立てて解説をしようと思います。
まとめ
- 「両手仲介」とは、不動産屋が物件を仲介する際、売主様と買主様の両方を自社でお手伝いすることで、双方から仲介手数料を収受できる取引のこと
- 「両手仲介」を狙うのは、購入の仲介でも同じ
- 「両手仲介」の対象となる売主様には、自社で新築戸建やリノベーション済の中古マンションといった商品を取り扱っている「不動産会社」も含まれる
- 仲介会社の営業担当者はまず「両手仲介」が可能な物件を積極的に紹介し、片手仲介の物件はあまり紹介しない
仲介会社の営業担当者に物件探しを丸投げしていると、「両手仲介可能物件」という少ない選択肢の中で購入判断を迫られかねません。
対策としては、ご自身がSUUMOやat-homeで気になる物件を見つけた際は、URLを営業担当者に送って、
「これも一緒に見せて欲しい」
と依頼しましょう。
そうすれば片手仲介物件でも、資料請求や案内の手配をしてくれるはずです。
不動産屋を疑いすぎるのは良くないですが、一生に数回のお取引を前に、業界の仕組みを知っておいても損はありません。
ご参考になりましたら幸いです。
鹿児島 二郎