この記事ではこんな疑問を解決します
・不動産の売出価格はどうやって決めたらいいの?
・相場より高い金額で販売したいので、注意点を教えて欲しい!
世の中に商品を販売する際、当然ながら「いくらだったら売ります!」という価格を設定する必要があります。
価格は商品のスペックや競合製品との差を基準に設定され、それが市場の需要にマッチしていれば、無事に売れていくわけです。
価格が高すぎれば全く売れず、逆に安すぎれば損をしてしまう。資本主義経済において、誰もが納得できるはずの至極単純な理論なのですが、こと不動産においては、この価格設定を間違えてしまう方が非常に多いです。
それもそのはず、普段会社に勤めている一般の方で、価格設定という販売戦略に携わっている方はそう多くありません。
素人である一般の方が、数千万円の資産である不動産の適正な販売価格を決めるのは、大変難しいことなのです。
今回は不動産の売却における、戦略的な「売出価格」設定のコツについて、売買仲介の営業マンである私が解説していきます。
これから不動産の売却をされる方にはとても有益な情報ですので、是非最後までご覧ください。
最適な売出価格とは?不動産売却時の注意点!【仲介営業マンのおすすめ!】
不動産の売出価格には、大きく分けて3つのパターンが存在します。
それぞれの特徴と、メリット・デメリットについて解説します。
(1)チャレンジ価格
1つ目は、相場よりも高い金額で売り出す「チャレンジ価格」です。
一括査定サイト等で複数の不動産会社に査定を依頼し、査定価格が最も高い会社に売却を依頼するタイプの方は、このパターンに当てはまります。
メリット
- 高い金額で売却できる可能性がある
- 最終的に売却に至った時、「もっと高く売れたんじゃないか。。」という不満を感じずに済む
デメリット
- 市場から最も注目される「新着物件」としての販売期間をドブに捨てることになる
結論から申し上げると、このパターンを選んで失敗してしまうケースは本当に多いです。
前述したように、購入検討者から最も注目されるのは、最初に不動産ポータルサイト等に掲載する「新着物件」のタイミングです。
購入検討者から良い条件を引き出すには、
「他の人に取られてしまう前に買わなければ!」
という焦りにも似た気持ちが背中を押す状況を作り出すことが重要です。
この気持ちを作り出すのに最も有効なのが「新着物件」という期間限定のブランドなのですが、ここで相場よりも高い金額を提示することは、
「高い物件だなあ。。」
と敬遠されるだけではなく、価格以外の希望条件にマッチしている方からも、
「高いからどうせ誰も買わないだろう!」
と軽んじられてしまい、気持ちを盛り上げることができません。
もう1つ重要なのが、SUUMOやat-homeといった不動産ポータルサイトでは、多くの方が価格の上限を設定して物件を検索するため、例えば、査定価格が3,600万円の物件を4,100万円のチャレンジ価格で売り出した場合、予算が「4,000万円まで」の方の目には触れることがありません。
仮に、数か月後に価格を3,600万円に値下げしたとしても、広告に「新着物件」と記載されているのと、「価格更新」と記載されているのとでは、購入検討者に与える印象は大きく変わります。
「売れなくて価格を下げたのだから、価格交渉すればもっと値下げしてもらえそうだな!」
と足元を見られ、結果的に最初から3,600万円で売り出すよりも安い金額で成約となる恐れがあります。
少しでも高い価格で売却したいという気持ちは痛いほど分かりますが、それでもチャレンジ価格での売却をおこなうのであれば、査定価格+5%、どんなに高くても+10%程度の水準に止めることをおすすめします。
(2)査定価格
2つ目は、不動産会社から提案された金額で売り出す「査定価格」です。
鹿児島 二郎
メリット
- 市場から最も注目される「新着物件」としての販売期間を最大限活用できる
デメリット
- 最終的に売却に至った時、「もっと高く売れたんじゃないか。。」という不満を感じる可能性がある
査定価格で販売を開始することで、前述の「他の人に取られてしまう前に買わなければ!」という購入検討者の気持ちを効果的に引き出すことができます。
鹿児島 二郎
また、
「他の人が私より高い金額を提示したら、売主様はそちらに売ってしまうのではないか。。?」
という気持ちを持たせることで、不動産の取引では珍しくない価格交渉を断念させる効果があります。
査定価格での販売開始と聞くと、高い金額で売却できる機会を逃してしまうように聞こえるかもしれませんが、最終的には売主様が得をする可能性が高いのです。
鹿児島 二郎
不動産を高く売却するためには、購入検討者側の気持ちに立って、販売戦略の中であなたの物件の付加価値を高める工夫が必要なのです。
(3)早期売却価格
最後にご紹介するのは、査定価格よりも低い金額で販売を始める「早期売却価格」です。
このパターンを採用する機会は少ないですが、売主様のご事情や物件の特徴によっては、これが最も優れた選択肢である場合もあります。
メリット
- 短期間で売却できる可能性が高い
- 需要の少ないエリアに所在していたり、懸念点がある物件でも注目を集めることができる
デメリット
- 高い金額で売却できる可能性が無くなる
早期売却価格は、相場よりも安い金額で販売するということですので、普通に考えれば売主様にとってのメリットは少ないです。
すぐに現金が必要で、何か売り急がなければならない事情がない限りは、このパターンを採用する必要はありません。
しかし、物件の地型(土地の形)が極端に悪かったり、売却物件があふれている供給過多なエリアである場合は、過去の成約事例に基づく適正価格で販売活動を続けていても、なかなか手を挙げてくれる買主は見つかりません。
そうなると、不動産買取業者への売却を検討することになりますが、この場合は早期売却価格を更に下回る条件での売却を余儀なくされます。
そういった状況を見越して、初めから相場よりも若干安い金額で「新着物件」として市場に売出し、「買取業者以上、査定価格未満」の金額で売り切ってしまうのが、有効である場合もあるのです。
売却しようとしている不動産が、ライバル物件と比べてあまり見所がなく、売却活動の苦戦が予想されるようであれば、今後更に相場が下がってしまう前に売出価格を「早期売却価格」とする戦略を検討する余地はあるでしょう。
まとめ
- 「チャレンジ価格」は、市場から最も注目される「新着物件」としての販売期間をドブに捨てることになる
- 「査定価格」での売出は、「新着物件」としての販売期間を最大限活用でき、結果的には好条件で売却できる可能性が高い
- 「早期売却価格」は、「買取業者以上、査定価格未満」の金額で売り切ってしまうという戦略を取る場合は有効な手段になる
不動産の相場を操作することはできませんが、販売戦略を工夫することで、購入検討者の気持ちを動かすことは十分に可能です。
「売出価格」を決める際は、手に入るか分からない目先の損得ではなく、最終的な成約価格を見越した戦略を立てて臨むことをおすすめします。
鹿児島 二郎